「お前ら、逃がさへんど。」笹垣は牙を向き出す。
亮二は図書館でぼうっとしていた。図書館の司書谷口は亮二を案じ、小さい頃の夢を訊く。「海賊。」亮二はぼそりと答える。
亮二は松浦にあるアルバイトを押し付けられていた。少年売春である。亮二のもとには金のない男子学生が集まり、年上の女性の相手をして小遣いをもらっていた。
雪穂は、襲撃事件の被害者藤村を送りながら、笹垣が藤村に事件の被害届けを出させようとしているのを知る。そこから亮二と雪穂の尻尾をつかもうということらしい。雪穂は亮二から藤村を強迫するためのフィルムを受け取る。時効まで穏やかにしていたい亮二に、「あなたがコケたら、私も終わりなんで。」冷たくあしらう雪穂に、亮二は何も言えなかった。
亮二は松浦にバイトを辞めたいと申し出るが、松浦は取りあわなかった。凶器さえ捨てていない亮二に、「俺が共犯者だったら殺してるよ。」と言って脅しをかける。
ある日、亮二は松浦のマンションにいる所を笹垣に見つかってしまう。とっさに階段を降り逃げる亮二。雪穂に電話をかけてしまう。
雪穂は事件の写真を藤村のロッカーに忍ばせ、相談をするふりをして事件の被害届けを出さないように仕向ける。それを知った笹垣は雪穂に直接聞き出そうとする。雪穂は何も分からないことを装う。
「この親鸞は父母の孝養のためとて、一返にても念仏候はず。」(歎異抄第五章)の一節をつぶやく笹垣。雪穂の後姿を見送る。
一生このままでいれるわけがないと弱気な亮二に松浦は、「おまえは人殺しなんだよ。自首もしないようなヤツなんだよ。いつまでも善人づらするな。」となじりつけ、もう自首するか、自殺しろと言う。
その時亮二がバイトを紹介した園村から、電話の呼び出しが。客の女性がホテルのベッドで死んだと言うのだ。亭主は筋者らしい。松浦からなんとかするように命令された亮二。園村を帰す。
亮二は雪穂を呼び、もう一緒に自首したい、罪を償って出直す方がいい。と言う。雪穂は、今園村と死んだ女性を引き離すには、血液型の違う亮が、完全に別の人と会ってたというアリバイを作れると言う。
「俺に死体とやれって・・・?俺のことなんだと思っているわけ?」亮二は言うが、雪穂は、逃げ切るためには、ここで止めたら意味が無いと言う。亮二は雪穂をバカ女と言い、そんなことでは幸せになれないだろと訴える。雪穂は、笹垣にも、義母にも同じことを言われた、亮にもそう言われたら、その通りだと認めるしかない。と言い、諦める。街の光の渦の中で、「私たち、カップルに見えるかな・・・」と言い、「最後にやりたいことがあるんだけど・・・」と亮二の手を取る。
二人の行った先は教会だった。雪穂は床に向かってイエスキリストの絵を描く。ミッション系の施設にいた頃毎日お祈りをしていたらしい。
「でもこの人にこび売ったって、全然幸せになれなかった。この人の前で施設のおじさんにいたずらされそうになっただけ。私も結構な嘘つきだけど、この人もたいがいだよ。神の前に皆平等とか、信ずる者は救われるとか、求めよさらば得られんとか・・・。嘘ばっか。」
雪穂は祭壇をめちゃめちゃに壊し、十字架をステンドグラスに投げつける。大きな音を立てて割れるステンドグラス。
黙ったままの亮二。「俺、いったい好きな女に何させてんだろう・・・。」
亮二は雪穂の手を握り、自分はもっと強くなる。もう一人で頑張らなくていい。雪穂が二度と手を汚さなくてすむ様に頑張るからと誓うのだった。
そして亮二は最後の良心を捨てた。死んだ女に自分の精子を入れたのだ。
次の日女は発見された。
笹垣は、署からしばらく休めと言われる。
亮二は松浦と共謀し、自分の死亡届を出す。自分は死んで水葬されたことにして、身をくらませることにしたのだ。最後に会いに行った母親は事情を察した。「あんたは船に乗って死んだんだ。そういう話でいいんだね。」母親は泣きながら、後姿で息子を見送る。
亮二は谷口に別れを告げ、雪穂には風とともに去りぬの本の中に手紙と死亡届を残した。
手紙にはこう書いてあった。
「レッドバトラーのように、知恵を使って世間を出し抜き、金を儲け、あなたを思い切り甘やかしたい。逃げのびるための馬車をあげたい。悪趣味なほどの大きな宝石をあげたい。そして、いつか安らかな夜と、心浮き立つ朝をあげたい。不公平なあの人があなたにくれなかったものを、なんもかんもあげたい。それが俺の夢。」
海賊になりたかった自分が幼い頃の夢を追えるなんて、なかなか素敵な人生だという文句で手紙は終わっていた。
雪穂は亮二を追いかける。電車がいく寸前に亮二をつかまえた雪穂は、亮を抱きしめて口づける。そしてこう言う。「ここに亮がいることを私はずっとずっと知っているから・・・」
レビュー
事態は急展開し、なお罪を重ねてしまう二人。亮二はとうとう自分の戸籍上の存在まで消してしまう。お天道様の涙まで誘うような、二人の流浪の人生。だが、二人を覆うけだるさもの憂さ。それはほんらい抱えていた日常の世界の闇の部分であり、たとえばどんな人生だったとしても、二人はそうなっていたかもしれないという宿命感に淵取られている。この回で森下氏は、二人によりカルマ的な日常感を背負わせたのではないか。それは、亮二にとっては、無防備な日常にぽっかり落とし穴が開いているという「穴の悲劇」、雪穂にとっては、頑張るほどに空回りしてしまい、「存在」が遠のいてしまうという「殻の悲劇」である。二人の尊いくちづけは、リ・バース=再誕生を思わせる。しかし、二人は悲劇に進むしかないのだ。確かな翼は、二人のさ迷える魂を救い出してくれるだろうか。
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